三吉演芸場
1930(昭和5)年に開業した三吉演芸場は、横浜に唯一現存する芝居小屋です。1945年5月の横浜大空襲で市内が焼け野原になった時も奇跡的に被害を免れ、芝居や落語、浪曲や歌謡で戦争で大変苦労をした市民を力づけました。
その頃は1Fで銭湯『草津温泉』を運営し、その二階を地元の方々に習い事などの発表の場に貸していたのが演芸場の始まりとのこと。当時は近隣の住民のコミュニティースベースとしてさぞかし活気があったことと思われます。
観客激減の時代をも乗り越えた劇場パワー。
1950年代に一世を風靡した石原裕次郎など『銀幕のスター』たちの登場で、多くの人々が映画に夢中になりました。1952年には日本初のTV放送も開始され、当初TVは『初任給の54倍』と言われるほどの大変高額商品だったため、街頭テレビが出現し、誰もがTV画面に釘付けになる時代に突入しました。お陰で三吉演芸場からは見る間に観客が減ってしまったそうです。
それでも、閉めることなく今日まで続いているのは、大衆演劇団の皆さんとオーナーの本田さんやスタッフの皆さんの熱意、歌丸師匠をはじめとする多くの方々の応援、熱烈なファンの力ですね。
185席ある劇場内は、余裕を持たせたレイアウトで、常に掃除が行き届き、居心地良く整えられています。緩やかな傾斜をつけた劇場内は後ろの方からでも見やすい作りとなっています。
訪れた観客の皆さんが、期待感に満ちて待つことしばし、豪華な緞帳が上がれば、全国の実力派一座による華麗な舞台がはじまります。涙あり、笑いありの舞台は一度見たら虜になるような素晴らしいステージです。
1974(昭和49年)1月からは、近くの真金町出身の落語家・桂歌丸師匠による独演会が始まり、多くの落語ファンをも惹き付けました。
1990年頃に娯楽の多様化で観客数が激減した際には、歌丸師匠が「横浜の大衆演芸を支えてきた演芸場をぜひ残したい」と「三吉演芸場を残す会」会長として立ち上がりました。横浜橋商店街、三吉橋通商店街も応援し、やがて1996(平成8)年から建替えが始まり、1998(平成10)年に生まれ変わりました。
毎日新聞の公式サイトの記事によれば、昨年280回も芝居を見に来た87歳になるファンがいるとのこと。この三吉演芸場が、どれだけ皆に愛されているか、という証しです。閉幕後に演芸場前に来て頂ければ、ファンとの距離感の無さがわかります。
ここでは演劇が終わった後、演劇団の皆さんが外に出てひとり一人をお見送りするのです。70代、80代の方もいらっしゃるけれど、30代40代の女性ファ ンも多いように見受けられます。20代の方もいらっしゃるようです。皆さん実にうれしそうに、階段を降りて来て、座長や団員の方たちと笑顔でお礼を交わし 合っています。この場面に会う度に「いいなあ」と微笑ましく温かな気持ちになります。
日本一かわいい商店街にある『熱い演芸場』は、他にはない三吉橋通商店街の自慢です。
毎日新聞の公式サイト
http://mainichi.jp/articles/20160111/ddl/k14/040/064000c
三吉演芸場
横浜市南区万世町2-37 TEL045-231-7633
◎開演時間
[昼の部]13:00〜16:00(開場時間 12:00)
[夜の部]18:00〜21:00(開場時間 17:00)
◎定休日:不定休